静止衛星にとって重要な静止軌道とは何か?

静止軌道とは、人工衛星の軌道の一つで、地球の赤道上空で自転と同じ速度で回っているために、地上から見て衛星が静止しているように見られる状態の軌道です。
地球の同じ位置を常に観測しているために、主に気象衛星や放送衛星などに使われています。軌道の高さはおよそ36000km、地球を一周する時間は自転と同じおよそ24時間です。
(自転の時間は正確には24時間から4分ほど短くなるが、それは地球が公転するために生まれる物で、365倍すると24時間になる。)

静止軌道の速度

人工衛星は、地上からの高さによって軌道に乗る速度が違ってくる。高度500kmでは秒速7.6kmと速くなり1時間34分で地球を一周する。
国際宇宙ステーションISSのある高度400kmでは、秒速7.7km。ほとんどの宇宙作業が、その程度の高度で行われている。
静止軌道36000kmに乗る速度は、毎秒3.1kmです。その速度ではおよそ一日で地球を一周することになる。
軌道上の速度は低軌道良いも遅くなっていますが。
軌道の高度が高くなると、それだけ軌道に投入するエネルギーが大きくなる。
静止軌道に乗せるには低軌道よりも大きなエネルギーが必要になる。
そのために、衛星が搭載した燃料の大半を軌道に乗るだけで使ってしまうことに。

クラークと静止軌道

SF作家のアーサー・C・クラークが静止軌道に人工衛星を乗せて、通信を伝える技術について論文を書いたことで知られている。そのため、静止軌道をクラーク軌道と呼ぶこともある。
クラークは、三つの衛星を用いたら、全世界規模で通信ができると主張していた。現在の衛星通信の先駆けを想像していたことに。

静止軌道の利用

気象衛星は、地球の常に同じ位置を見ることで、上空の一定の位置から雲の様子を見ることができる。それにより気象予測の正確さを保つことができる。
気象衛星ひまわりの映像でお馴染みのように、気象観測には静止軌道が使われないと不便な物になってしまう。ひまわりは日本だけじゃなく、アジア太平洋の各国にもデータを提供している。
日本の衛星放送は、ゆりシリーズの衛星により行われている。NHK、民間BS、CS放送を含めて、いずれもそこから放送を行っている。パラボラアンテナの位置を一定に保てるのも静止軌道にあるから。

静止軌道の問題点

静止軌道は赤道上に1本しかないため、そこに配置する衛星は過密な状態になっている。
そのため、廃棄する衛星は静止軌道上からどけることが国際条約によって決められている。
静止軌道は、そこに置ける衛星の数が限られており、それ以上に拡張することができない。そこに割り込んでくる物があるなら、現在ある衛星と衝突する恐れがある。
静止軌道の利用について国際的な話し合いで調整していくしかない。これから衛星の利用が増やしていきたいなら、競合が起きて争いになるかも。
また、静止軌道が高軌道なために、スペースシップ等でたどりつけず、補修作業をすることができない。そのため故障した衛星があれば放棄するしかない。

静止軌道についてのまとめ

静止軌道は、地上から見て遠く離れたところにありますが、私達の生活に役立っています。それが使えないようなことがあれば、大変なことになる。
気象衛星や、衛星放送が一般に広がっている以上、静止軌道で事故が起きないことを願いましょう。