「忖度する」を忖度せずに学ぶ ~忖度するの意味と使い方~
- 2018.05.26
- 文学
2017年に世間を騒がせたモリ・カケ問題を発端に頻繁に使われ、ユーキャン新語流行語大賞にも選ばれた「忖度」という言葉ですが、発端となった事件の影響で悪い意味で使われる言葉、というイメージが強いと思います。
今回は実際の意味や使い方を紹介します。
忖度の意味
「忖度」とは、推し量ること、推測すること、相手が何を言いたいのか考えること、という意味です。
漢字の作りとしては、「忖」のりっしんべんが「心」を指します。つまり相手の気持ちです。
「寸」は寸法などのサイズ、つまり測ることを指します。「度」も温度や回数(一度、二度)などに使われるように測ることを指します。
忖度の語源
語源は中国最古の詩集とされる「詩経」に出典されていたもののようです。
「他人に心有り、予(われ)これを忖度す」
訳すと、他人には自分とは別の心があるが、自分はこれを推し量って理解することができる、という意味になります。
なので、最近頻繁に聞くようになった言葉ですが、実は歴史ある言葉です。
忖度の使い方
主な使い方を紹介します。
①彼女の心を忖度して、誕生日プレゼントを選んだ
→「これをプレゼントしたら喜んでくれるだろうな」と予想して購入した
②子供の気持ちを忖度して、ハンバーグを作った
→「大好物なものを食べたいだろうな」と察してご飯を用意した
③会社の組織体制に忖度して、仕事を引き受けた
→「今の体制では、この仕事は自分がやればスムーズに片付くだろうな」と考え、仕事を引き受けた
④上長の想いを忖度して、懸念事項はあるがX社との契約を決めた
→「上長は懇意にしているX社と契約したいんだろうな」と察して、金額面やサービス面でやや不利でも契約した
⑤忖度ばかりで、自分の意見がない
→他人の気持ちばかり考え、結局自分はどうしたいのかを主張せず何を考えているかわからない
上記より、①②はサプライズなども考えた「思いやり」の面が強く、③④は会社や上長といった上の立場に対する「気遣い」の面が強いと言えます。
⑤は場面によりますが、争いを避け丸く収めようとしている面を鑑みると「気遣い」に分類されるかなと思います。
忖度の類似語
「忖度」に似た言葉で「斟酌(しんしゃく)」という言葉があります。
「斟酌」とは、相手の事情や心情を汲み取ること、言動を控えめにすること、という意味です。
漢字の作りとしては「斟」も「酌」も分量は鑑みて汲む、ということを指しており、どちらも相手の気持ちを推し量る、という点で共通しているため「忖度」も「斟酌」も同じ意味のように思いますが、実はちょっと違っています。
「忖度」は相手の気持ちを推し量ること、に対し、「斟酌」は相手の気持ちを推し量った上で対応すること、という後の行動、対応までを指します。
裁判でよく聞く情状酌量の余地ありとし、刑が軽くなった場合は、まさに裁判官が「斟酌」した結果であると言えます。
忖度の対義語
「忖度」の対義語は何かと考えたとき、ぴったりの言葉は今のところ見当たりません。
相手の気持ちを考えない、という点でいえば、「自己中心的」であったり、10年前ぐらいに流行った「KY(空気読めない)」などが当てはまりますが、単語としてしっくりくるものがありません。
何か良い単語をご存知であれば教えてください(笑)
忖度のまとめ
発端の事件の影響で悪いイメージのある「忖度」ですが、意味自体には良いも悪いもない言葉です。
使い方のところでも説明しましたが、「思いやり」として使われるか、「気遣い」として使われるかでイメージが変わると思います。
特に上下関係がある場面での「気遣い」が行きすぎたときに、悪いイメージに変わってしまう側面がある言葉ですね。
是非、「思いやり」のある良いイメージで使っていきたいですね。
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